
この記事ではRORO船の概要を紹介しつつ、物流業界にどのような影響を与える可能性があるのかを解説します。
物流に関する課題やお悩みがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
- 目次
1.RORO船とは

RORO船とは、トラックなどが直接乗り込んで貨物を運搬できる船舶のことです。「RORO」は「Roll on Roll off」の略称で、トラックの乗り込み=Roll on(ロールオン)と下船=Roll off(ロールオフ)を意味しています。
RORO船の最大の特徴は、その名前の通りトラックやトレーラーなどが自走して船に乗り込み、荷物を積み降ろしすることが可能な設計になっているという点です。トラックやトレーラーは乗船後、貨物を積んだシャーシ(トラックなどにおける、貨物を積んだ台車部分のこと)を船に載せます。
シャーシを船に積載後、シャーシを切り離してトラクタ(トラックなどにおける、前方の運転席部分)はそのまま下船。RORO船がシャーシ=貨物を輸送して、港に到着後は再びトラクタがシャーシを連結させて下船し、トラック貨物を輸送します。名称の通り、「乗せて降ろす」という行為で貨物を輸送するのです。
1-1.ランプウェイと広い艙内
RORO船は独特な構造を持つ船舶です。大きな特徴として「ランプウェイ」「広い艙内」の2つが挙げられます。
- ランプウェイ:「傾斜路」を意味する言葉で、トラックが荷物の積み下ろしを行うために用いられる走路のこと。RORO船ではランプウェイが船尾または船側に配置され、荷物を乗せやすくかつ降ろしやすくなっているため、荷役時間が大幅に短縮される。
- 広い艙内:「艙(そう)」は、船内にある乗客や貨物を収容する部屋のこと。RORO船の艙内は非常にスペースが広く確保されており、大型車両や大量の貨物を収容できるようになっている。
1-2. 荷役の方法
先述の通り、RORO船はランプウェイを通じてトラックやトレーラーなどが船に乗り込み、荷下ろしを行います。この方法は「水平荷役方式」と呼ばれます(「荷役」とは、船舶などにおける貨物の積み込みや荷下ろし作業のことです)。
この方法の利点は、荷下ろしを行う港などにクレーンなどの大規模な施設がいらないという点にあります。ちなみに、船に積んだコンテナをクレーンで吊り上げて荷役を行う方法は「垂直荷役方式」と呼び、この方法が採用されている船を「LOLO船」と呼びます(LOLOとは「Lift on Lift off」の略語です)。
2.RORO船とその他の船舶との違い

RORO船は、他の船舶とどのような違いがあるのでしょうか?
2-1.RORO船とフェリーの違い
RORO船とフェリーはともに物資の輸送手段として使用されますが、フェリーは旅客貨物だけでなく一般旅客や有人トラックも輸送するというのが大きな違いです。船内にはドライバー専用の客室や設備が整っており、航行中はドライバーの休息期間として労務処理できます。
それに対して、RORO船はトラックやトレーラーは貨物の積み下ろしで乗船するものの、ドライバーは船から下りるのが一般的です。一部の例外として少数のドライバーに限り乗船が可能なRORO船も存在します。
2-2.RORO船とConRO船の違い
ConRO船というのは、RORO船とコンテナ船の両方の機能を持っている船舶のことです。ConRO船の大きな特徴は、艘内スペースに貨物を積めるRORO船の特徴を持ちつつ、甲板にコンテナを積むこともできるという点にあります。
3.RORO船のメリットとデメリット

RORO船には、いくつかのメリットとデメリットがあります。
3-1.RORO船のメリット
RORO船のメリットは大きく4つあるとされます。
3-1-1.物流の効率化
トラックやトレーラーなどの自走によって積み込み・荷降ろしが行えるため、荷役時間を大幅に節約できます。また、海上輸送を用いることで、陸路による長時間・長距離輸送を減らしトラックドライバーの負担を軽減できます(このメリットは、この後に紹介する物流業界の問題にも大きく関連します)。
3-1-2.環境への配慮
RORO船によって、トラックに代わり大量の貨物を輸送することによりCO2排出量を減らし環境負荷低減に貢献すると考えられます。
3-1-3.利便性の高さ
RORO船はクレーンなどの設備がなくても、荷役がしやすいという特徴があります。そのため、国内間の輸送だけでなく韓国などの国外輸送においても、RORO船が利用されています。
3-1-4.到着日の精度の高さ
陸路と違い、海上での輸送は、渋滞や災害による道路分断などの影響を受けにくく、出入港も他の船との兼ね合いから基本的には細かく決められています。このため陸路よりも到着日の正確な予測がしやすいのもメリットです。荷受けから到着日の逆算がしやすく、イレギュラーな事態により影響を受ける頻度が少ないです。
3-2.RORO船のデメリット
RORO船は多くのメリットがある一方で、4つのデメリットがあるとされています。
3-2-1.荷役のかかる時間
船舶に貨物の積み下ろしを行う時間という観点に注目すると、どうしても陸路のみの輸送と比べて余計な時間がかかってしまいます。
3-2-2.積載効率の低下
RORO船はトラックやトレーラーのシャーシが貨物となるため、コンテナを縦積みできるコンテナ船よりは積載効率が落ちてしまいます。
3-2-3.重量制限
RORO船などの船舶は、トラックなどと比べて大量の貨物を一度に輸送できます。しかし、RORO船の場合は荷役に用いるランプウェイの強度次第で、積載できる重量に制限が生じてしまいやすいです。
3-2-4.海上災害・国外輸送状況に由来する制限
海上輸送のため、どうしても台風や高波などの海で発生する自然災害によって出入港できないという事態が発生します。この場合、状態が回復するまで長期間輸送を制限される可能性があります。
また港には国外からの輸入に関わる船も到着することから、コロナ禍回復初期にみられたような入港制限解除に伴う国外船が集中します。その結果、RORO船の受付ができないといった事態が生じます。
これらのリスクから、配送品目の選定が必要になるのもデメリットといえるでしょう。
4.物流業界でRORO船が注目されている理由

現在、国内の物流では「モーダルシフト」という言葉がしきりに叫ばれています。モーダルシフトとは、これまでトラックなどを用いて行われていた陸路での貨物輸送を、鉄道や船舶による輸送へ切り替えることを指します。
今、モーダルシフトに視線が向けられているのには、大きく2つの理由が存在します。そして、その理由がRORO船の活用と深く関係しているのです。
4-1.環境負荷低減
モーダルシフトは、地球温暖化対策として大きな注目を集めています。国土交通省によると、トラックが1tの貨物を1km運ぶ際に排出されるCO2の量は、216gだとされています。それに対して、同じ条件で鉄道が排出するCO2の量は20g、船舶は43gしかありません(参照:モーダルシフトとは|国土交通省)

配送に係る環境負荷低減の考えは、省エネ法に係る実態調査などからも明らかなように荷主や消費者も注目している点であり、今後環境負荷を基軸とした輸送選択が行われる可能性もあります。(参照:荷主の省エネ法規制丨資源エネルギー庁)
この点からもモーダルシフトに取り組んでいる・検討していることそのものに価値があるといえます。
物流におけるCO2排出量削減において、モーダルシフトは非常に有効な手段であり、それゆえにRORO船は注目されているのです。
4-2.物流業界の課題解決(2024年問題)
最近、「物流2024年問題」と呼ばれる問題をよく耳にします。2019年から施行されている働き方改革関連法によって、時間外労働の上限が月45時間、年360時間と設定されています。自動車運送業では上限が年960時間と定められ、2024年4月から適用されることになっています。
自動車運送業の時間外労働の上限は、例外的に長く設定されています。しかし、年960時間はトラックドライバーにとって、これまでの時間外労働時間よりも少ない時間です。したがって2024年4月からは、トラックドライバーは従来のような長時間・長距離輸送ができなくなります。その結果、国内の物流が停滞する懸念が示唆されています。
その他にも、トラックドライバーは低賃金・長時間労働という点から、人材不足に陥っています。これらの問題の解消法として、モーダルシフトが役立つとされており、そこでRORO船が注目されているのです。
長距離・重量輸送をRORO船などのモーダルシフトを活用し、それ以外の配送にトラック便を活用することでより効率的に輸送の仕組みを整えることが期待できます。
5.物流業界の変化に今後も注目しよう

RORO船をはじめとして、今後国内の物流業界は大きな変化が訪れると予想されます。EC事業・通販事業においても、その影響は少なくないでしょう。物流に関するニュースには、これからも要注目です。