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この記事では、シニアマーケティングの成功に効果的な戦略を紹介します。市場規模の基礎知識から、ありがちな失敗例、属性別のペルソナ設定など、具体的な事例を交えながら解説しますので、ぜひ参考にしてください。
- 目次
1.シニアマーケティングとは

シニアマーケティングとは、主に高齢者(シニア)を対象としたマーケティング活動全般のことです。何歳からを高齢者と呼ぶか定義はさまざまですが、世界保健機関(WHO)や厚生労働省では65歳以上と定義しています(参照:e-ヘルスネット|厚生労働省)。そのため、この記事では、主に65歳以上を対象とする販促活動をシニアマーケティングとして解説します。
まずは、シニアマーケティングの規模や必要性について見ていきましょう。
1-1. シニアマーケティングの規模
日本の高齢化は世界でも類を見ないスピードで進んでいます。2024年9月時点の65歳以上の人口は約3,625万人と、前年の3,623万人に比べて2万人増え、過去最多を記録しました。また日本の総人口に占める割合も29.3%と、前年度の29.1%より0.2ポイント上昇しています(参照:統計からみた我が国の高齢者 p.2丨総務省)。
今後の65歳以上の人口は、2040年に34.8%、2045年には36.3%と増え続けることが予想されます(参照:同 p.3丨総務省 )。このような状況下、シニア人口の増加とともにシニアマーケットも拡大し、成長市場として注目を集めているのです。
1-2. シニアマーケティングの必要性
高齢化が加速する日本で、シニアマーケットは成長市場です。総務省の調査によると、2023年の65歳以上の就業率は、過去最多の914万人と20年連続で増加しています(参照:統計からみた我が国の高齢者p.6丨総務省)。

出典:(同丨総務省)
このように65歳以上であっても、社会に出てアクティブに経済活動を行っているシニア層が増えています。前述の通り、日本の総人口に占めるシニアの割合も増加しているため、シニア層以外の人口の割合は減ることになります。結果、シニア以外の市場と比較すると、相対的に成長する市場といえるのです。
シニア層に効果的にアプローチすることで、安定した売上増加と長期的な顧客獲得が見込めます。シニアマーケティングは、企業の持続的な成長に不可欠といえるでしょう。
2. なぜシニアマーケティングは難しいのか?

シニア市場は成長の一途をたどっているにもかかわらず、多くの企業ではシニアマーケティングに対して足踏みをしているのが現状です。総務省の調査によれば、特定の財(商品)・サービスの1世帯当たり1ヶ月間の支出額は、平均7万5,182円なのに対し、60歳以上の支出計は、4万円~6万円と平均支出を下回っています (参照:家計消費状況調査丨総務省)。このデータにより、シニア層の購買活動が他の層より消極的であることがわかります。
なぜシニアマーケティングは難しいのでしょうか。それには以下の3つが理由として挙げられます。
2-1. シニア層のデータが乏しい
シニア層のデータは、他の世代に比べて不足している傾向にあります。総務省の調査によれば、60歳以上のインターネット利用率は約30%~90%と幅広く分布しており、若年層の90%以上という高い利用率と比べて顕著な差が見られます。

出典:令和6年版 情報通信白書 図表Ⅱ-1-11-3丨総務省
シニア層の中でもインターネット利用率にばらつきがあるため、以下のようなデータの収集が難しくなっています。
- ECサイトでの購入履歴
- Webサイトの閲覧履歴
- SNSでの行動データ
- スマートフォンアプリの使用状況
つまり、デジタルツールを通じた行動データの取得が限定的となり、結果としてシニア層の消費行動や生活実態の把握が、他の年代と比べて困難な状況となっています。
このようにシニア層のデータが乏しいため、多くの企業はシニアを一つのかたまりとして捉えがちです。しかし、65歳以上のすべての人が、同じ価値観や消費行動パターンを持っているとは限りません。
例えば、60代の健康なシニアと80代で介護が必要なシニアでは、生活スタイルや購買意欲が大きく変わります。これらを考慮せず、一括りで訴求しても効果は出にくいでしょう。
2-2. シニアに対する固定観念によってニーズを取りこぼしている
「シニアは保守的で新しいものに興味がない」「IT機器を使いこなせない」「お金を使わない」といった固定観念も、シニアマーケティングを難しくしている原因として挙げられます。
近年では、積極的に新しい情報や技術を取り入れるシニア層も増加しています。また旅行や趣味、健康などに多くのお金を使うシニア層も存在します。
固定観念があることで、こうした多様なニーズに対して適切なアプローチをできずにいることが、シニアマーケティングの難しさにつながっているといえます。
2-3. シニア層の購買決定へのハードルが高い
シニア層は、購買決定において慎重な傾向があります。
長年の経験から商品やサービスを見極める目があり、品質や安全性、信頼性などを重視します。また退職後の収入減や年金生活ゆえの節約志向により、消費行動に慎重です。そのため商品やサービスの購入には、安心感や納得感を求める傾向にあります。
シニア層にアプローチする際には、よりわかりやすい説明、丁寧な接客、無料体験やトライアルの積極的な提供などの工夫が求められます。この点もシニアマーケティングを難しくしている要因でしょう。
3. 成功するシニアマーケティング戦略

シニアマーケティングで成功を収めるためには、シニアへの深い理解が必要です。
この章ではシニア層を属性別に分類し、ペルソナ設定を行う方法、情報収集手段の把握、シニア層の心をつかむ訴求ポイントを解説します。
3-1. シニア層の属性に応じて分類をする
シニアマーケティングを成功させるためには、シニア層を一括りにせず、年齢や健康状態、経済状況、生活スタイル、価値観など、さまざまな要素を考慮し、以下のような複数のセグメントに分類します。
分類 | 特徴 | 生活スタイル | 消費傾向 | マーケティングポイント |
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アクティブシニア |
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ケアシニア |
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ギャップシニア |
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ディフェンシブシニア |
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各セグメントに合わせた適切なマーケティング戦略を立案することで、効果的にシニア層にアプローチできます。
3-2. 属性に沿ったペルソナ設定を行う
属性に沿ったペルソナ設定を行うことで、より効果的なマーケティング戦略を立てられるでしょう。年齢や性別だけでなく、経済状況、健康状態、趣味嗜好など、多角的な視点からセグメント化を行うことが重要です。
より具体的なペルソナ設定を行うために、既存顧客の定量属性データの分析を通して、シニア像の行動パターンや購買心理に関する定性的な情報も集めます。収集したデータを基に名前や年齢、性別、職業、年収、趣味、情報収集方法など、詳細な情報をペルソナに反映させると、リアルな顧客像を描くことができます。
3-3. シニアの情報収集手段を理解する
デジタル時代の到来により、シニア層の情報収集手段も大きく変化しています。総務省の調査によると、2023年のインターネット利用率は60代で90.2%、70代で67.0%、80歳以上で36.4%と、年齢層による明確な差が見られます(参照:令和6年版 情報通信白書 図表Ⅱ-1-11-3 年齢階層別インターネット利用率丨総務省)。
60代を中心とした若手シニア層では、商品情報のWeb検索やSNSでの口コミ確認、動画サイトでの使用方法チェックなど、デジタルツールを積極的に活用する傾向にあります。一方、70代以降のシニア層では、新聞折込やテレビCM、店頭での直接相談など、従来型メディアを重視する傾向がみられます。
このように、シニア層へ効果的に情報を届けるには、情報収集手段を理解し、従来型とデジタルの両メディアをターゲットにあわせて使い分けることが重要です。
3-4. 情報の信頼性を打ち出す
シニア層は、新しい情報や商品選びにおいて慎重になる傾向があります。長年の経験から見る目が養われており、質の良さや安心感を見極めたい心理が働くためです。納得のいく根拠を求めるため、専門家の見解や実証データの打ち出しが効果的です。
例えば、健康食品の場合、医師が推薦コメントを掲載したり、医療機関との連携をアピールしたりすることで、製品の価値をより具体的に伝えられます。また利用者の口コミや体験談は、自身の生活におけるメリットをイメージしやすくなるでしょう。
このように専門家の知見や実際の体験談などを訴求すると、シニア層の購買意欲を自然な形で高めることができます。
3-5. シニア層の心をつかむ訴求ポイントを考える
シニア層にとって、商品やサービスのわかりやすさと利便性は、購入判断の重要な基準となります。複雑な操作や手続きは敬遠されやすい傾向にあるため、以下の5つの要素を重視した設計が効果的です。
- 文字は大きく、コントラストを明確にする
- 簡潔で直感的に理解できる操作方法にする
- 動画や図を用いて使い方を説明する
- オンライン以外のサポート体制を充実させる
- 購入方法が簡単で多様な決済手段を活用する
これに加え、「毎日の生活をより快適に」といった具体的な生活シーンや感情に訴えかける表現を用いれば、より深い共感を得ることができます。
4. シニアマーケティングの成功事例紹介:企業の取り組み

ここからは、実際の企業におけるシニアマーケティング施策の成功事例を3つ紹介します。
4-1. 株式会社明治
明治は、高齢者の栄養摂取問題に着目した「明治メイバランス」シリーズを展開しています。加齢による食欲低下や栄養不足に対応するため、たんぱく質やビタミン、ミネラルをバランスよく配合した商品設計を実現しました。
製品開発では、多様な味のバリエーション展開に加え、飲みやすい容器デザインを採用。さらに、販売戦略では高齢者の生活動線を重視し、従来の小売店に加え、訪問介護ステーションや地域包括支援センターなど介護関連施設への展開を強化しています。
ターゲット層のニーズを的確に捉えた商品設計と、きめ細かな販売チャネル戦略をもって、シニア市場への参入を実現しています(参照:明治)。
4-2. 東京トラベルパートナーズ株式会社
東京トラベルパートナーズは、介護施設向けに「旅介」というバーチャル旅行サービスを提供しています。体力面や健康面で実際の旅行が難しいシニアでも、高品質な映像を通じて旅行気分を楽しめるよう工夫を凝らしています。
特徴はライブ配信による臨場感あふれる映像と、視聴者が質問やリクエストできる参加型の仕組みです。介護施設のスタッフの負担を減らしながら、入居者に新しい体験を提供できる点が施設からの支持を集めています。
この新しい形の旅行サービスは、介護施設の魅力づくりに貢献するとともに、シニアの人たちの毎日をより楽しく豊かにしています。とくに、従来の「できない」という制限を「できる」に変えた発想と、きめ細やかなサービス設計により、新たなシニアマーケットを開拓することに成功しています(参照:東京トラベルパートナーズ)。
4-3. 株式会社カーブスジャパン
カーブスジャパンは全国約2,000店舗で約80万人の会員を誇る、50~60代の女性向けフィットネスクラブです。1回たった30分の運動プログラムにより、無理なく続けられるのが特徴です。入会を検討する方への5回無料体験や医師からの推薦、会員の体験談など、具体的な情報提供で安心感を高めています。
また女性専用の環境づくり、わかりやすい申込み方法など、始めやすく続けやすい仕組みを整えています。「運動したいけれど始められない」というシニア女性の悩みに寄り添い、「安心」「簡単」「継続」を大切にしたサービスづくりが、多くの支持を集めている理由です(参照:カーブス)。
5. シニアマーケティングでビジネスを成功させたいときは千趣会にご相談ください

シニアマーケティングは大きなビジネスチャンスですが、効果的なアプローチには専門的なノウハウが必要です。
千趣会では長年にわたるシニア層との関係づくりで培った経験を活かし、貴社のビジネスをサポートいたします。特に「ベルメゾンシニア」では、60歳以上の会員向けカタログに、広告チラシを同封するサービスを展開しています。1,800万人の会員データから最適なターゲティングができるうえ、通販に慣れた活動的なシニア層への確実なリーチが可能です。カタログと一緒にお届けするため高い開封率も期待できます。
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