この記事ではアパレルECでの市場規模や大手ブランドの取り組みを見つつ、アパレルECを成功させるための方法を解説していきます。
物流に関する課題やお悩みがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
- 目次
1.アパレルECとは
アパレルECとは、衣類などをオンラインで販売するサービスのことです。有名なサービスとしては、ユニクロやZOZOTOWNなどが挙げられます。新型コロナウイルス感染症をきっかけとして、多くの企業がECへ進出しましたが、中でも市場規模の成長が注目されているのがアパレルECです。
2.アパレルEC市場の現状と動向
近年、アパレル業界のEC市場は着実に成長しています。経済産業省が発表している資料とともに、市場の動向やどのような企業が活躍しているのかを見てみましょう。
2-1.市場規模の推移と分析
経済産業省によると、2022年のアパレルEC(衣類・服装雑貨等のBtoC EC)の市場規模は、2兆5,499億円であり前年比で5.02%増加しています。過去4年間の推移を見ても、2020年以降の市場の伸びは著しいです。
年度 | 市場規模 | 前年比増加率 |
---|---|---|
2019年 | 1兆9,100億円 | - |
2020年 | 2兆2,203億円 | 16.25% |
2021年 | 2兆4,279億円 | 9.35% |
2022年 | 2兆5,499億円 | 5.02% |
参照:「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」 p.51丨経済産業省、「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書」 p.54丨経済産業省、「令和2年度電子商取引に関する市場調査報告書」 p.52丨経済産業省
2-2.アパレル業界のEC化率の変遷
近年のアパレル業界は、すべての商取引におけるECの割合を示す「EC化率」も順調に上昇し続けています。経済産業省によると、2022年のアパレルEC(衣類・服装雑貨等のBtoC EC)のEC化率は21.56%。
過去4年間の推移を比較すると、2019年→2020年に大きくEC化率を伸ばして以降、現在ではアパレル市場の売上の1/5以上をECが占めているという状態です。
年度 | EC化率 |
---|---|
2019年 | 13.87% |
2020年 | 19.44% |
2021年 | 21.15% |
2022年 | 21.56% |
参照:「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」 p.51丨経済産業省、「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書」 p.54丨経済産業省、「令和2年度電子商取引に関する市場調査報告書」 p.52丨経済産業省
2-3.主要なプレーヤーとその売上動向
アパレルEC市場を牽引する主要なプレーヤーとしては、ユニクロ、アダストリア、ZOZOTOWN、Nikeなどが挙げられます。
ユニクロやアダストリアは、自社ECサイトに経営資源を投じて着実に売上を伸ばしています。ZOZOTOWNはアパレルに特化したモール型ECとして圧倒的なシェアを誇り、高成長を続けています。Nikeもまた、独自のDtoC戦略で顧客との関係構築を図っています。
2-4.アパレルECのトレンドと変化
近年のアパレルEC業界は、3つの主なトレンドが注目されています。1つ目のトレンドは「オムニチャネル化」です。オムニチャネルとは、実店舗やオンラインなど複数のチャネルを通じて、ユーザーにアプローチする戦略を意味します。オムニチャネル化により、ユーザーの満足度を高めて売上向上を目指します。
2つ目のトレンドは「個別化」です。AI技術を活用したパーソナライズやレコメンデーション機能の実装により、一人ひとりの顧客に合わせた商品提案ができるECが増えつつあります。
3つ目のトレンドは「サブスクリプション型ビジネスモデル」です。衣服を購入するのではなく、定額料金でレンタルするという新たなビジネススタイルが、アパレルECでも徐々に導入されています。
これらのトレンドが、今後のアパレルEC市場にどのような影響を与えるかは、引き続き注目していきましょう。
3.アパレルECの種類と特徴
アパレルECは、メーカー・ブランドなどの企業が運営する「BtoC型のEC」もあれば、個人が個人に販売する「CtoC型のEC」もあるなど、近年多様化しています。それぞれの特徴を解説します。
3-1.BtoC型のEC①メーカー・ブランド直販
自社商品のみを取り扱うメーカー・ブランドが運営するECサイトです。メーカー・ブランド独自の世界観を反映させたECサイトを構築できるのが大きな特徴です。
メーカー・ブランド直販のECサイトを運営している企業は、リアル店舗とECサイトの両方で商品の販売を行っているケースが多くあります。そのため、リアル店舗とECをうまく組み合わせたフェアやキャンペーンが展開できたり、両方で顧客との接点を作り、ファン化を進めることができます。
3-2.BtoC型のEC②モール
ショッピングモールのように、多くのブランドを取り扱っているECサイトです。国内のサービスとしては、ZOZOTOWNや楽天市場などがこれに該当します。ユーザーは多彩なブランドから、色合いやアイテムの種類などを絞りつつ商品を選ぶことができます。
ブランド側は、テナント料を支払うことでモールに出店することができます。モールに登録している多数のユーザーに自社商品を販売できる、集客力が魅力です。一方で、膨大な商品から自社ブランドを認知してもらえないと、売上を思うように伸ばすことはできないでしょう。
3-3.BtoC型のEC③小規模ブランド
チェーン展開をしていない、小規模ブランドによるECサイトです。なかにはリアル店舗を構えず、ECサイトだけで営業を行っているブランドも存在します。個人経営のブランドの多くが、ECサイトだけでなくSNSなど複数のメディアを用いて、ブランドの認知度拡大を薦めつつ、商品の販売につなげています。
3-4.CtoC型のEC①ネットオークション
ヤフオク!や楽天オークションなどが、ネットオークション系のECサイトに該当します。年齢や性別を問わず、幅広い層に利用されており、他のECサイトでは見られないレアな商品やコレクター商品を探すユーザーが多いのが特徴です。オークション形式で価格が決まるため、テストマーケティングにも利用できます。
3-5.CtoC型のEC②フリマアプリ
フリマ(フリーマーケット)のECとしては、メルカリやラクマがよく知られています。売り手はスマートフォンなどでアイテムを出品し、販売価格を設定して売買を行います。オークションとは違い、設定された価格ですぐに売買が成立するため、より手軽に商品のやり取りができます。
4.大手アパレル企業のEC事例と成功のポイント
現在、アパレルECで着実に売上を伸ばしている企業は、どのような取り組みをしているのでしょうか?先ほど紹介したユニクロ、アダストリア、ZOZOTOWN、Nikeの4社の事例を見つつ、アパレルECサイト成功の秘訣を考えていきましょう。
4-1.ユニクロ:広告・アプリを活用
ユニクロのEC戦略として目立つのは、デジタル広告やテレビCMによる大規模なECサイトの宣伝です。さらにユニクロは、ジーユーと共同企画・開発したアプリ「StyleHint(スタイルヒント)」で、両ブランドの着こなし・コーデを紹介。気に入ったコーデが見つかったら、アプリを通じて商品を購入できる仕組みになっています。
4-2.アダストリア:スタイリングと購買行動を連結
アダストリアは、2018年からオリジナルサイト「STAFF BOARD(スタッフボード)」を通じて、スタッフによるスタイリング投稿を強化しています。2023年11月時点でスタイリングの投稿数は200万件以上。各スタッフのスタイリングページから直接商品を購入できるようにすることで購入後のイメージを膨らませ、顧客の囲い込みを促しています。
4-3.ZOZOTOWN:初回購入を逃さない仕組み
ZOZOTOWNは、アパレルECの中でも屈指の商品点数を誇ります。多種多様なブランドが一堂に会していることで、消費者は必ず自分好みの商品を見つけられます。商品数が多い分、検索機能やレコメンド機能、カスタマーサポート機能が非常に充実しています。それに加えて、ZOZOTOWNは新規会員登録者にクーポンをプレゼントするなど、初回購入のハードルを下げる仕組みが充実しています。
4-4.Nike:複数のアプリで顧客と関係構築
NikeのEC戦略は、アプリを活用することで顧客との関係構築を図っている点が特徴的です。Nikeは「SNKRS」「NRC」「NTC」「Nike App」という4つのアプリをリリースしています。アプリを通じて、商品の最新情報を送って予約受付をしたり、ECで購入した商品を店頭で受け取れるようにしたりなど、購買体験の向上につなげる取り組みがなされています。
5.アパレルEC運営の課題と対策
アパレルECは躍進を続けている一方で、少なからず課題も抱えています。日本市場でアパレルECを成功させるうえで、避けては通れない課題とその対策を考えました。
5-1.リアル店舗に負けない顧客体験を提供する
日本は海外諸国と比較しても、国民1人あたりのアパレル店舗数が多いとされています。経済産業省によれば、国内におけるアパレル店1店舗あたりの人口は904人。これはアメリカの2,274人、イギリスの1,624人と比較しても高い数値といえるでしょう(参照:「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業」P.35|経済産業省)。
アパレルにおいてもEC化率が徐々に高まっているものの、店舗数が多く利便性が高いため、日本の消費者は衣類をリアル店舗で買う傾向が強いといえます。ECサイトの運営時にはリアル店舗の利便性に負けない、高い顧客満足度を提供することが重要です。
具体的な方法としては、顧客情報をもとに顧客一人一人のニーズや購買傾向を把握したうえで、商品のレコメンドや有益な情報を提供するなどのマイクロマーケティングが考えられます。予めクレジットカード情報を登録しておくことで、ワンクリックで購入が完了する決済機能の利便性も、ECサイトでの購買体験を高めてくれる要因です。
5-2.「サイズ感がわからない」を防ぐ
アパレルECサイトでの買い物では、衣類や靴のサイズがわかりにくいという課題があります。ユーザーが自分に合ったサイズを見つけにくいと、商品の購入を躊躇したり、返品が増えたりします。
最近では、ECサイト上で簡単な質問(肩幅や胸囲、腹囲など)に答えると、商品を着用した際のサイズ感を表示してくれるサービスがあります。さらに先進的な手法として、AR(拡張現実)を利用したバーチャル試着体験の提供も進んでいます。
こうした対策を講じることで、顧客がサイズ感で悩んでしまう事態を未然に防ぐことができるでしょう。
5-3.在庫管理をスムーズにしてイライラを防ぐ
アパレルECで、よく取り上げられる問題が「在庫管理」です。自社ECサイトだけでなく、ZOZOTOWNといったモールに商品を出品しているとき、2つのサイトで同時に商品が売れる重複受注が発生してしまうのです。
対策として有効なのは、自社ECサイトとZOZOTOWNの在庫を一元管理するシステムの実装です。在庫システムの導入には費用がかかりますが、在庫管理はブランドに対する信頼に直結する問題です。自社のECサイトの規模に応じて、適切な在庫管理の仕組みを整えていきいましょう。
5-4.複数媒体でユーザーの認知獲得を目指す
EC化は重要な販売戦略ではありますが、ECサイトを立ち上げたからといって、すぐに新規顧客を獲得できるとは限りません。多くのメーカー・ブランドが独自の商品やサービスを提供し、ブランド力を武器にしている昨今、競合との顧客獲得競争は一層困難を極めています。
ここで重要となるのは、リアル店舗とECサイトのみならず、SNSやオウンドメディアなどの媒体を用いたマーケティング戦略の実践です。画像やテキスト、動画によるコンテンツを複数の媒体で展開することで、ターゲット層からの認知獲得を目指します。
そのうえで、ZOZOTOWNのように初回購入者への特典・割引などの施策も駆使して、ECサイトへの訪問者やリピーターの獲得に尽力しましょう。
5-5.人口減少=ターゲット縮小に備える
日本では少子高齢化が進んでいる影響で、各ブランドのターゲット層の人数が徐々に減少しています。この避けられない事実を前に、アパレルECでは次のような対策を取る必要があるでしょう。
- ターゲット層との関係構築:ターゲット層となる年代のユーザーとのコミュニケーションを密に行い、ファンと良好な関係を構築しましょう。
- インバウンド戦略への進出:英語や中国語など外国語での対応など、訪日外国人を対象としたサービスの提供を検討しましょう。
6.今はアパレルをECで買うのも当たり前の時代
ここ数年で、日本でのアパレルECの導入は一気に進みました。
消費者の間でも、ECサイトを通してアパレル商品を購入するのは珍しいことではなくなっています。ぜひこの流れに乗ってみてはいかがでしょうか。
とはいえ、アパレルECをただ始めるだけでは、思うような結果につながらない可能性があります。自社の販売戦略を見直しつつ、アパレルECを着実に成功させたいという場合は、ぜひ千趣会にお問い合わせください。販促・物流・コンサルティングのご支援が可能です。
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