
この記事では、DtoCの事例や注目される背景を紹介しています。そのうえで、メリット・デメリットや成功の秘訣なども解説しているので、DtoCを検討・実施するときの参考としてください。
- 目次
1.DtoC(D2C)とは

1-1.DtoCとは何か?
DtoCとはDirect-to-Consumer(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)の略で、メーカーが自社の商品を直接消費者に販売・提供するビジネスモデルのことです。D2Cと表記されることもあります。
これまでメーカーは自社の商品を小売業者を通じて消費者に販売していましたが、DtoCでは、それらの中間業者を省略し、自社で販売を行います。こうした特徴から、価格競争力の強化や直接的な消費者とのコミュニケーションを促進できるなどのメリットがあります。
なお、実際の商品販売は、メーカーがECサイトを立ち上げ、オンラインで行われるのが一般的です。
1-2.DtoCとBtoCの違い
DtoCとは、メーカーが直接消費者に商品を販売するビジネスモデルである一方、BtoC(Business-to-Consumer:ビジネス・トゥ・カスタマー)は、メーカーが小売業者を通じて消費者に商品を販売するビジネスモデルです。
DtoCではメーカーが商品価格を自由に設定できる一方、BtoCでは小売店やECサイトが設定します。また、商品のラインナップも、DtoCではメーカーが自由に決められますが、BtoCでは小売店やECサイトが判断します。
2.DtoCの事例

昨今では、さまざまなメーカーがDtoCに取り組んでいます。
2-1.Glossier
アメリカのスキンケアブランド「Glossier」は、DtoCに取り組む代表的なメーカーです。Instagramを中心にSNSを活用したマーケティング戦略と、自社ECサイトによる直接販売を展開し、若年層を中心に大きな人気を博しています。
2-2.Procter & Gamble(P&G)
アメリカの一般消費財メーカーProcter & Gamble(P&G)は、Gillette(シェービング製品)やTide(洗濯洗剤)などの一部商品で、オンラインストアでの販売や定期配送サービスを展開しています。
2-3.Koala Sleep
オーストラリアに本社があるKoala Sleepは、コアラマットレスで話題を集めているメーカーです。電車広告やWeb広告、インスタグラマーを活用したイメージ戦略をとったり、店舗も少なくしたりするなどして、消費者への直接的な販売を重視しています。また、120日の間なら返品できるという長期のトライアル期間を用意し、ベッドは寝てみないとわからないから購入のハードルが高い……という概念を覆しています。
2-4.キリンビール
キリンビールでは、通常の店舗でのビール提供だけでなく、家庭用のビールサーバーとあわせて直接消費者に届けるという「home tap」という事業を展開しています。
2-5.アサヒグループ食品
アサヒグループ食品では「アマノフーズ」というフリーズドライ事業を展開しており、さまざまなフリーズドライ食品を、ECで消費者に直接販売しています。
2-6.富士フイルム
富士フィルムは、日本を代表する精密化学メーカーですが、製品開発で培ってきたナノテクノロジーを駆使して「アスタリフト」という化粧品を開発し、消費者に直接届けています。
3.DtoCが注目される背景

アメリカの調査会社eMarketerによれば、アメリカのDtoCの市場規模は、2020年は1,115.4億ドルでしたが、2023年には1,749.8億ドルに伸びると試算されています(参照:What you can learn from disruptive D2C brands丨eMarketer)。
また、日本の市場規模も、売れるネット広告社によって2023年には2兆7,700億円、2025年には3兆600億円に達すると予想されています(参照:デジタルD2C市場規模、2025年には3兆円に達すると予測丨売れるネット広告社)。

DtoCが注目される背景はさまざまですが、大きな要因のひとつがSNSの普及です。
従来は、メーカーが商品を販売するには、消費者と直にやり取りする小売業者に頼らなければいけない状況にありましたが、SNSの普及によって消費者へのアプローチが容易になりました。これにより、メーカーが消費者に直接、商品を販売しやすくなったのが、DtoCが注目される理由のひとつです。
また、昨今では、消費者のニーズが多様化しています。消費者と直接コミュニケーションを取ることで、より柔軟にニーズに合わせた商品を提供しやすくなっている状況も、DtoCの注目度を高めている要因として挙げられます。
4.DtoCのメリット

DtoCには、次のようなメリットがあります。
4-1.ブランドの認知度を高められる
DtoCでは、消費者に直接販売するために、独自にECサイトを構築することが一般的となっています。このECサイトをブランドコンセプトに合ったものにすることで、卸売業者や小売業者を介して販売していたときよりも、ブランドを認知してもらいやすくなります。
4-2.消費者との関係を深められる
DtoCでは、商品販売のために消費者と直接コミュニケーションを取るため、小売業者を介していたときよりも、消費者との信頼関係が生まれやすいというメリットがあります。
また、それだけでなく、コミュニケーションを取る過程で、消費者からのフィードバックを受け取り、商品の改善につなげられます。消費者の嗜好を正確に把握し、ニーズに合った商品開発をできるようにもなります。これによって、消費者からさらに信頼を獲得できるようになるのも、DtoCならではのメリットといえます。
4-3.コストを削減できる
BtoCのようなビジネスモデルでは、メーカー→卸売業者→小売業者→消費者と、商品が消費者に届く流れのなかに小売業者や卸売業者が挟まります。そのため、商品の価格は、流通コストやマージンも含めて上昇します。
一方、DtoCはメーカー→消費者と、消費者にダイレクトに商品を届けるビジネスモデルです。卸売業者や小売業者に届ける際にかかる流通コストや、それぞれの業者のマージンがかからないため、結果的に商品の価格を低く設定できます。
5.DtoCのデメリット

DtoCビジネスにおいても、メリットと同様にデメリットも存在します。代表的なデメリットは以下の3つです。
5-1.集客やクレーム対応をする必要がある
従来のBtoCでは、小売業者や大手ECサイトが集客やクレーム対応をしていましたが、DtoCではメーカー側がそれらを行う必要があります。
5-2.取引の単位が小さいため生産管理や在庫管理が難しい
BtoCの場合、小売業者や卸売業者を相手に数百個・数千個とまとまった数を販売できますが、DtoCの場合、消費者が相手になるため取引の単位が非常に小さくなります。また、決まった数が一定のスパンで発注されるわけでもありません。こうした事情から、どのくらい生産をすればよいのか、どのように在庫を管理すればよいのか、というのが課題となります。
5-3.ECサイト構築に時間と労力がかかる
DtoCでは、基本的に商品販売はECサイトで行われます。ECサイトを構築するには、ある程度の専門知識が必要です。今はECサイトを簡単に構築できるシステムが多く登場してきていますが、具体的なコンテンツ・デザインなどは自社で考える必要があるため、多くの時間と労力がかかります。
6.DtoCの成功の秘訣

DtoCを実施する際は、以下のポイントをおさえておくと成功につながりやすくなります。
6-1.消費者と密にコミュニケーションを取る
SNSやメールマガジンなどを活用し、密にコミュニケーションを取ることも重要です。定期的に、できれば多くの発信をすればファンの増加につながりやすくなります。
ただし、特にSNSは、あまり宣伝色が強すぎると敬遠される傾向にあるので、いかに親しみをもってもらえるかがポイントです。フォロワー数の多いメーカーがどんな投稿をしているのかを参考にするとよいでしょう。
また、SNSには炎上のリスクもあります。発信前に、この投稿はモラルに欠けていないか、差別につながらないかなど、さまざまな角度からチェックすることが大切です。
6-2.商品の差別化を図る
消費者に販売する商品は、ターゲットとなる消費者のニーズに応えられていることが重要ですが、それだけでは競合他社のそれと似たりよったりなものになりかねません。集客が課題となるDtoCでは、商品の差別化は特に重要な要素の一つです。
商品の差別化を図るためには、まずは商品の特徴や付加価値を明確にする必要があります。例えば、オーガニックやエシカルな素材を使用している、カスタマイズができる、オンライン限定であるなど、他社の商品とは異なる特徴を整理します。
商品の特徴や付加価値を明確にしたら、それが伝わるような商品説明文やデザインを検討します。ここでどれだけ消費者に他社商品との違いをわかりやすく伝えられるかが、競合他社に勝てるかどうかの分かれ道になります。
6-3.迅速な配送と正確な在庫管理を行う
DtoCでは、直接消費者に商品を提供するため、迅速な配送と正確な在庫管理が求められます。
物流に関しては、自社での配送やサードパーティーの物流会社を利用する方法があります。自社での配送の場合、自社で倉庫を持ち、自社で配送を行うことができますが、初期投資が必要となります。一方、サードパーティーの物流会社を利用する場合は、ノウハウや配送ルートを持っているため、効率的に物流を行うことができますが、コストがかかることもあります。
在庫管理に関しては、商品の需要予測とリアルタイムなチェックが重要です。データを活用して需要予測を行い、適切なストック数を把握したうえで、実際の商品の出荷状況・ストック数をリアルタイムで把握して、在庫切れや余剰在庫が発生しないようにする必要があります。在庫管理においては、在庫管理システムというITツールがしばしば用いられています。
6-4.カスタマーサポートを充実させる
DtoCでは、メーカーが自らクレーム対応をする必要があります。ECサイトを運営していると、商品が破損していたので交換してほしい、商品が届かないのでキャンセルしたい、などさまざまなトラブルが起きます。
顧客からのクレームは、素早く処理をしないと二次トラブルにつながりますが、反対に迅速にできればその顧客がリピーターになってくれる可能性もあります。カスタマーサポートを用意するとともに、一定の品質で対応できるように、さまざまなトラブルを想定した対応マニュアルを用意しておくことも重要です。
6-5.データ分析による改善を繰り返す
どの施策でもそうですが、DtoCでも、データを用いた分析・改善が重要です。分析方法には以下のような方法があります。
1.購買履歴の分析
顧客の購買履歴から、よく購入される商品、または一度購入したがリピートしなかった商品を分析し、改善点を見つけることができます。
2.アンケート調査の分析
顧客からのアンケート調査やフィードバックを分析することで、商品の改善点や不満点を把握できます。
3.ウェブ解析の分析
ウェブサイトのアクセスログやSNSの情報を分析すると、顧客がどのような商品に興味を持っているのか、どのようなキーワードで検索しているのかなどを把握できます。
データ分析を行うことで、商品、ECサイトのデザイン、コミュニケーションの取り方などを、より顧客のニーズに合わせたものに改善できます。ただし、データ分析には専門的な知識が必要な場合も多いため、ある程度コストをかけてでも専門家に相談することをおすすめします。
7. DtoCの販促やフルフィルメントを検討中でしたら千趣会にご相談ください

DtoCは、ブランドの認知度を高められる、消費者との関係を深められるなど、メーカーにとってさまざまなメリットがありますが、特に小売業者に託していた業務を一挙に担う必要があります。
DtoCを始めたいけど、どんなふうに消費者と接すればいいのかわからない、集客やクレーム対応に自信がない、という事業者は、ぜひ千趣会に一度お問い合わせください。これまで多くのEC事業者をサポートしてきた経験をもとに、貴社に最適なご提案をいたします。
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