
通販は顧客の購買行動を読んだり、商品の売れ筋を見つけたり、どの販促法が有効かをチェックしたりなど、日常的に検証しなければならない業務がとても多いビジネスです。
なので、通販ビジネスに携わるほとんどの部署の方は、データ活用が避けて通れない業務です。
今回はデータ活用のメイン機能である「データベースマーケティング」と活用にあたって意識・注意してほしい点をまとめた「データ活用における留意点」を解説します。
- Point
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- データベースマーケティング
データ活用の体系・切り口・手法・運用形態・ひな形などを説明 - データ活用における留意点
データ活用の運用面で留意いただきたい点を指摘
- データベースマーケティング
- 目次
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第1章:通販は科学のビジネス
第2章:データベースマーケティング (1) 分析に必要なデータ項目
第2章:データベースマーケティング (2) 主な分析内容
第2章:データベースマーケティング (3) 段階的な分析手順
第2章:データベースマーケティング (4) DBMシステム概要
第2章:データベースマーケティング (5) 分析テンプレート
第3章:データ活用における留意点 (1) 分析の重要性と活用例、データ活用に必要なスキル
第3章:データ活用における留意点 (2) 分析準備時、データ活用時におけるポイント
まとめ
第1章:通販は科学のビジネス
通販ビジネスは、「科学のビジネス」とも言われている。顧客にダイレクトにアプローチし、その反応(ありもなしも含め)をもとに、次の品揃えや販促方法を改善していくロジカルなビジネスである。戦略を整え、機能を装備した必要条件だけでは通販ビジネスはうまくまわらないのだ。

第2章:データベースマーケティング (1) 分析に必要なデータ項目
「顧客の見える化」を実現できる仕組みがデータベースマーケティング(以下:DBM)である。
以下DBM に必要な「データ項目」「主な分析内容」「段階的な分析手段」について説明する。
まず、分析に必要なデータ項目(図1)を挙げる。

基本的な分析は、顧客・商品の属性データ(顧客:住所・年令・性別・既未婚等、商品:価格・ジャンル・ブランド・色サイズ等)と購買履歴データ(いつ・どのプロモーションで・何を・注文(返品)した・支払方法は・ギフト扱いは等)が中心であり、その他販促履歴データや顧客やり取りデータ等との組合せでより詳細な分析が可能となる。
さらに、自社以外の情報としてコーザルデータ(競合・天候・イベント等の需要に影響を及ぼすデータ)や2次データ(人口統計等公表されているデータ)も組み入れて分析することもある。
第2章:データベースマーケティング (2) 主な分析内容
次に、主な分析内容(図2)について。

通販におけるマーケティング分析は、顧客・商品(サービス)・媒体(店舗)の3つの軸
の単体または組合せての分析で、ほとんど行うことができる。
次に分析内容の補足説明を行う。
- 顧客データの単体分析
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- 顧客プロフィール分析:顧客の地域・年齢等の分布状況を確認する。
※年齢を把握するには生年月日データが必要だが、マーケティング上非常に有効なので、任意項目だけど顧客との接点機会があるごとに入力を促したい。 - RFM 分析: RFM とは顧客の優良度を測る指標で、最新購買日( Recency )が新しいほど、一定期間の購買回数( Frequency )と購買金額 Monetary )は多いほど、次回購入する確率が高いと言われている。
- 顧客プロフィール分析:顧客の地域・年齢等の分布状況を確認する。
- 商品(サービス)データの単体分析
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- 品揃え分析:商品ごとの売上高を時系列で把握することにより、売れ筋死に筋をチェックするとともに、商品構成の妥当性も確認できる。
- 同時購買分析:別名レシート分析ともいわれるが、何と何を同時に購入されたかを確認し、商品コーディネートや特集を組む際に役立たせる。
- 媒体(店舗)データの単体分析
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- 媒体別損益:売り場としての坪効率や露出頻度による売上実績から評価を行う。
- 顧客と商品の関係分析
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- RFMT分析:一般的なRFM分析の高度化分析法で、顧客や商品のタイプ(Type )まで掘り下げて優良度をみる際に使用する。
- 購買パターン分析:商品の視点(廉価高級、商品カテゴリ等)から購買客の特性を読む。
- 購買行動分析:顧客の視点(新規継続、都会 ローカル、年齢層等)から購買商品の特性を読む
- “顧客の声”分析:商品レビューや問合せ・クレーム等の登録データからコメントの傾向やその多寡を確認する。
※キーワード検索の簡易的分析から、テキストマイニングによる高度な分析まで種々ある。
- 商品と媒体の関係分析
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- 掲載条件別効果分析:売り場やディスプレイによって商品がどう売れるかを確認する。
- 顧客と媒体の総合分析
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- 販促効果分析:販促のターゲット選定、掲載商品、適用手法等の結果分析で、費用対効果の高い販促策を見つける。
顧客サービス効果分析:顧客サービスの内容変化(送料単価・送料無料基準・支払方法・ポイント制度等)により購買行動がどう変化するかを確認する。 - Web ログ分析:販売サイトでの「足跡」データから滞在時間・ページ遷移・離脱等の状況をつかみ、サイト改善に役立たせる。
- 販促効果分析:販促のターゲット選定、掲載商品、適用手法等の結果分析で、費用対効果の高い販促策を見つける。
- 顧客・商品・媒体の総合分析
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- 販促先選定:多種多様なデータを駆使して、販促ごとのターゲット選定を行う。
- 需要予測:物が売れるには様々な要因が関係していると思われるが、それを少しでも解き明かすことにより、販売機会や在庫のリスクを減らす。
第2章:データベースマーケティング (3) 段階的な分析手順
さらに、段階的な分析手順(図3)では、いきなり高度で複雑な分析を行うのでなく、単体の分析から順番に分析レベルを上げていくことをお勧めする。

通常、ほとんどの分析課題はクロス分析で事足りることが多い。その他個別詳細分析では目的に合わせた切り口で分析を行う。
ここまでの分析はデータベースの構造やデータ抽出ツールの理解ができれば、企画やMD(マーチャンダイジング)の担当者が直接作業することも可能である。
但し、需要予測や販促先選定のようなデータマイニング手法を駆使しないと処理しづらい分析は、主にマーケティング分析を専門に対応する部署(担当)が行う必要がある。
第2章:データベースマーケティング (4) DBMシステム概要
参考までに、DBMを展開するためのDBMシステム概要(図4)を説明する。

この図では、顧客との多様な接点から受注や問合せのデータを取り込み、整理・分析しや すいように大福帳DB(データウェアハウス)や目的別DB(データマート)に編集し、 各利用部門に提供している構造を表しています。
第2章:データベースマーケティング (5) 分析テンプレート
個々の分析内容は管理表や出力イメージを分析テンプレートとして整理しているので、そのいくつかを紹介する。
①顧客デシル分析
一定期間の顧客別受注(または売上)実績金額を昇順で並べ、顧客数の10 分位(デシル)で集計したものである。
その累計を折れ線グラフで表示したものはパレート図(またはABC 分析)と言われている。
この分析により、自社の顧客実態分布を確認したり、上位1 割顧客の購買行動を確認したりして、顧客別販促のベースに活用する。

②販促管理表
販促内容別に期日・発信数・経費・実績等の一覧表を作成し、レスポンス率や受注金額規模を算出し、施策間では CPO Cost Per Order :売上 1 件獲得するにかかった販促コスト)で評価する。

③ RFM 管理表
顧客ごとのR 値・ F 値・ M 値を算出し、該当するセルにプロットしていき、分布状況を確認する。
販促の顧客抽出時のRFM データを残しておき、そのセルごとにレスポンス率を算出して、どのセルまで選定するのが有効かを検証する。
また、RFM では 3 次元の表となり見にくいため、 RF (または RM )の 2 軸に絞って管理する方法もある。

④継続性管理表
当該年の新規顧客を固定し、その後の購入状況を時系列(年単位)で追いかけていく。
新規顧客の翌年・翌々年・3 年後・・・の継続率と購買単価を管理し、それぞれを積み上げていくことから階段図ともいわれている。
なお、この管理表では既存顧客の翌年継続がある程度読めるため、次年度売上計画の元資料としても使える。
要は、既存顧客への通常販促で翌年売上見込みが立つので、その売上見込値と売上たい計画値の差分を新規顧客でどう獲得していくかのシミュレーションを行う。

第3章:データ活用における留意点 (1) 分析の重要性と活用例、データ活用に必要なスキル
これまでの章立てでは、データ活用の背景や分析内容・手順などを具体的に説明してきたが、データ活用の運用面で認識し・注意いただきたいことをこの章でまとめています。
1.マーケティング分析の重要性
マーケティング分析は分析軸を見つけるための定性分析とそれを量的に計る定量分析の2 つを行き来させて作業を行う。
定性分析はなかなか数値では表しにくい感性情報(アナログ)がベースにある。よってデータベースマーケティングを生かしていくためにも下図(図5)にあるようなアナログ情報の目利きが重要になる。

2.マーケティング分析の活用例
ダイレクトマーケティング(≒通販)は以前はONE to ONEマーケティングともいわれ、顧客一人一人のニーズに対応していかなくてはならないビジネスです。
そこで、下図(図6)にもあるように種々の販促物(ここでは専門店型カタログ)のコンセプトと顧客ニーズをいかにマッチングさせていくかが成功のポイントとなる。

3.データ活用に必要なスキル
データ活用に必要なスキルは分析能力だけではない。
下図(図7)にあるように、まずは通販ビジネスの基本戦略を理解してほしい。具体的にはダイレクトマーケティング4つの戦略(詳しくは「通販ビジネス基礎講座」を参照)を押さえるビジネスリテラシが求められる。
次に、分析目的に合致したアウトプットのためにはどのデータをどう見るかも重要となってくる。個々のデータの癖や精度などを理解できているデータリテラシが必要となる。
ビジネスリテラシとデータリテラシを踏まえたうえで最後に必要なのが分析リテラシである。ここは最適な分析手法の選択とその結果の読み取り能力が問われる。
この3つのリテラシがデータ活用において重要であるが、個人的に感じている重要度のウェイトはビジネス・データ・分析の順に5:3:2の割合かと考えている。

第3章:データ活用における留意点 (2) 分析準備時、データ活用時におけるポイント
今度は運用上の留意点を分析作業の前後に分けて説明する。 まずは、分析準備時における5つのポイントを挙げる。
1.データを疑る
保有データは必ずしも活用目的を考慮して入力されているとは限らないため、すぐに使える状態のデータではない(クリーニングが必要)可能性があるから
2.データの説明力
実績データは過去の状況を表しているに過ぎず、データが今後を物語るのには限度がある
3.データ収集にはコスト・時間・手間がかかる
一からデータを収集するにはその有効性をテストし確認してから行いたい
4.生データを眺める
データの癖を読み取るのに手っ取り早い方法(アナログだけど目利きを育てるには有効)
5.データは“在るもの”ではなく“育てるもの”
在りもののデータでは分析に限度がある、使えるデータをどう見つけ蓄積していくか
次に、データ活用時においても5つのポイントを挙げる。
1.仮説検証運用ルールの定着化
PDCAサイクルを回し、リスクを抑え、より有効な施策へと学習効果を上げる
2.分析効果は最初から期待しない
データ分析当初は、なかなか現場の勘や経験を超えられないもの
3.分析結果は毒にも薬にもなる
データの一人歩きや結果を意図的に解釈されてしまうリスクを考慮
4.感性アナリストを育てる
分析結果から有意性のある情報を読み取るのはアナログのセンス
5.ジョブローテーション&ナレッジアップ
分析担当者には最低3部署での経験を積ませ、かつ短期間で異動させないこと
『分析するバカしないバカ』という言葉がある。これは分析担当者同士が自戒をこめて語っていた言葉なんだが、なぜか納得してしまう。
分析し過ぎは本来の目的を外れて近視眼的になってしまう懸念がある、でももっと困るのは分析しなさ過ぎ。
日本の企業はまだまだ分析を重要視していないケースが多いように感じる。
客観的で論理的なデータ分析により、状況を正しく具体的に把握し、恣意をはさまない判断基準でもって意思決定することがより強く望まれる。
また、EC上で生成される大量のデータ(ビッグデータ)を高速で解析し販促に活用したり、AI(Artificial Intelligence)によるデータ処理の効率化・高速化も進んできている。
まとめ
千趣会には、60年以上通販ビジネスを実践してきたなかで培ってきたさまざまなノウハウがあります。ぜひ、貴社のビジネスにお役立てください。
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