
この記事では、リテールメディアの概要やメリット、導入方法、事例を解説します。
- 目次
1. リテールメディアとは

リテールメディアとは、小売事業者(リテール企業)が保有する商品の販売データや消費者の顧客データなどを活用し、ECサイトや実店舗に広告を配信する仕組みの総称を指します。例えば、小売店に設置されているデジタルサイネージ広告などの広告媒体が挙げられます。
リテールメディアを活用することで、メーカーは「ファーストパーティデータ」(小売店の顧客である生活者の購買データや小売店の利用ログなどの行動データなど、小売店が独自に収集・所有するデータ)をもとに、広告やクーポンを効果的に配信できます。
例えば、メガネを販売している小売店では、実際にメガネを購入した顧客の性別、年齢などの販売データや、来店した客数が多い月や曜日などの独自データを得られます。そのファーストパーティデータを用いることで、メーカーは自社アプリを利用しているユーザー層にあわせて最適なクーポンを配信することが可能です。
2.リテールメディアが注目される背景
さらに、近年の新型コロナウイルス感染症の影響によるEコマースへの大きなシフトや、小売事業に関連した技術である「リテールテック」の進歩、さらにサードパーティCookie規制の動向による影響などもあり、リテールメディアが注目されています。
株式会社CARTA HOLDINGSが2022年9月に発表したリテールメディアの広告市場に関する調査結果によると、2023年には245億円、2026年には約3.3倍の805億円にまで市場規模が拡大すると予測されています。このようにリテールメディアは成長する可能性が高いと期待されています(参照:CARTA HOLDINGS、リテールメディア広告市場調査を実施 ~リテールメディア広告市場は2022年に135億円、2026年には805億円と予測~|株式会社CARTA HOLDINGS)。

3.リテールメディアがもたらすメリット

リテールメディアは、小売事業者(リテール企業)・メーカー・消費者それぞれに、次のようなメリットをもたらします。
小売事業者(リテール企業) | メーカー | 消費者 |
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以下で、詳しく解説します。
3-1. 小売事業者(リテール企業)
小売事業者は、顧客のニーズを満たすために、商品の販売、配送、アフターサービスなどを行っています。また、商品の情報や販売状況などを分析し、市場のニーズに応えるための戦略を立てています。
こうした 小売事業者が持つファーストパーティデータは、メーカーにとって確度の高い顧客にアプローチできる有益なデータですが、 小売事業者側はそれほど手間をかけずに収集することが可能です。そのため、 小売事業者はリテールメディアを始めると、低コストで収益の向上を狙えます。
ほかにも、広告によって 小売事業者が実際に取り扱っている商品がPRされればその分売り上げが伸びたり、来客数・アクセス数が伸びて結果的にほかの商品が売れたりするなどのメリットもあります。
3-2. メーカー
メーカーが得られる利点としては、 小売事業者のファーストパーティデータを活用し、 小売事業者を利用する消費者に最適な広告やクーポンを配信できるようになる点があげられます。
例えば、メーカーAでは、ある商品を販売する際に、小売店向けにポスターを作製し配布することにしました。その際に、自社商品の特徴をただ記載するだけでなく、その小売店を利用する消費者にとって魅力的な写真も掲載しました。このプロモーションは、小売店からの反応が非常によく、メーカーは商品の売り上げを前年比+50%に伸ばしたとのことです。
さらに、 小売事業者のなかには、Google、Facebook、Instagramなどの大手広告プラットフォームや、Amazonなどの利用者が多いECサイトに広告を出すこともあります。それによって、自社ブランドの露出機会を効率よく増やせるのもメーカーが得られるメリットです。
3-3. 消費者
リテールメディアは消費者にとっても非常に有益なものとなっています。消費者は小売店やメーカーが提供するクーポンや割引を利用して、通常よりもお得に商品を購入することが可能です。また、リテールメディアによって、おすすめの商品を目にする機会が多くなり、気になるものを探す時間を短縮できます。
4. リテールメディアを活用した販促活動の流れ

リテールメディアを活用した販促活動の主な流れは、以下のとおりです。
- 事前分析を行う
- ターゲティングを4つに分けて実施する
- メーカーが広告を作成する
- 広告を配信する
- インストアプロモーションを実施する
- 効果測定を行う
4-1. 事前分析を行う
リテールメディアの導入においては、まず来店・購入しているターゲット層(広告を届けるユーザー)を事前分析を行います。
来店・購入しているターゲットを事前に分析することで、広告の効果を測定するためのデータを得られます。事前分析では、ターゲットの人口統計学的情報(年齢・性別・住所など)、行動傾向(購買習慣・行動パターンなど)、ライフスタイルインサイト(仕事・趣味・社会的地位など)を把握する必要があります。
これらの情報を得るためには、Google AnalyticsなどのWeb解析ツールが有効です。小売事業者のWebサイトのトラフィックやユーザー行動に関する詳細なデータから、訪問者の地理的な位置、使用されているデバイス、サイト上の滞在時間などの情報を収集できます。
4-2. ターゲティングを4つに分けて実施する
事前分析を実施したら、ターゲティング(ターゲットを絞り込むための戦略)を行います。ターゲティングは、小売事業者が事前に収集した独自の行動データを活用しながら行います。
基本的には、下表のように、ターゲティングを「行動傾向」「デモグラフィック」「ライフスタイルインサイト」「購買行動」の4つに分けて、実施します。
ターゲティング | 行動傾向 | デモグラフィック | ライフスタイルインサイト | 購買行動 |
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行動傾向とは、顧客が小売店でどのような行動を取っているかを把握するもので、例えば来店頻度や購買金額、商品購入のタイミングなどです。
デモグラフィックとは、顧客の属性情報(性別、年齢、職業など)を把握するもので、企業がターゲットとする客層を特定するのに役立ちます。
ライフスタイルインサイトとは、顧客のライフスタイルを把握するもので、例えば旅行やレジャーなどを楽しんだり、音楽や映画を聴いたり見たりする傾向などを把握できます。
購買行動とは、顧客が小売店で購入した商品を把握するものです。過去に購入した商品を記録しておけば、同じ商品を購入した際にはクーポンなどを配信する、広告を出すといった取り組みができ、より精緻なターゲティングを実施できます。
4-3.メーカーが広告を作成する
ターゲティングで得た結果から、メーカーがリテールメディアの広告を作成します。広告の作成には、訴求力のある文章や商品画像などを使用します。
例えば、健康食品の広告であれば、「健康で美しくなりたい人必見!」や「美容で健康的な栄養素を含む◯◯商品」などの具体的な文章を記載します。競合他社による同様の商品が多い場合、例えばシャンプーの広告なら、「美容師がおすすめする、髪のダメージを補修する〇〇シャンプー」など独自の特徴や差別化した点を強調するのが一般的です。
画像も同様に、商品やサービスのメリットを視覚的に表現して、消費者に直感的に訴求するものがよく用いられます。
4-4. 広告を配信する
メーカーが広告を作成したら、ターゲット層に向けて広告を配信します。広告の配信方法には2種類あります。1つ目は「オウンドメディア」を使ったもので、これは小売事業者が有するECサイトや実店舗を広告媒体として配信する手法です。2つ目は「ペイドメディア」を使った方法で、これは小売事業者が有するもの以外の広告媒体にコストをかけて広告を掲載します。
導入当初は、ペイドメディアを中心に広告配信を行うのが一般的です。
4-5. インストアプロモーションを実施する
リテールメディアにおけるインストアプロモーションとは、広告に連動したデジタルサイネージを用いて、消費者の商品理解を深めて購買意欲を高めることを目的としたプロモーションのことです。
具体的な事例としては、該当商品の棚の前に来た顧客に対し、デジタルサイネージのコンテンツと連動してリアルタイムにクーポンや広告を配信するなどがあります。ほかにも、サンプリングの配布やイベント、ワークショップの開催なども挙げられるでしょう。
これらを実施する際に、あわせて行動分析を活用すれば、顧客がいつ、どこで何を買ったかなどの情報から、よりターゲットのニーズに向けたプロモーションとなります。
4-6. 効果測定を行う
リテールメディアの導入を行う際には、効果測定が重要となります。効果測定とは、広告投入前後のデータを比較して、広告効果を測定することです。効果測定を行うことで、広告効果を把握し、今後の戦略に活かせます。
効果測定を実施する場合には、購入者の行動をより的確に追跡するために、購入者のデータを収集し、購入前・購入後・購入しなかった場合を比較します。それによって、購入者が販売サイトや店舗に訪問したときの反応や、購入時の心理を把握できれば、より効果的な広告を作成し、高い購入率を目指せます。
5. リテールメディアを導入した事例

最後に、リテールメディアを導入した小売事業者の事例を紹介します。
5-1. キャラクターグッズメーカーA社
メーカーA社は、キャラクターグッズを販売するECサイトと実店舗を運営しています。同社は、アニメ・マンガ好きのなかでも特にコアなファン層をターゲットにしており、商品紹介やイベント情報などを配信するリテールメディアを活用して、ファン層とのコミュニケーションを深めています。
具体的には、店舗やイベントなどに参加してくれた顧客データをオンライン化するためにデジタルサイネージを設置し、キャラクターサービスの広告や一人ひとりにマッチしたエンターテイメント情報などの映像コンテンツを配信しています。
サイネージを設置した店舗で販売した商品の売り上げは、サイネージを設置していない店舗に比べて大幅に増加したというデータも出ているようです。クロスメディア配信(同じコンテンツを複数メディアで配信)により、店舗での購買率が30〜50%上昇しました。
5-2. 釣具店B社
釣具店B社は、釣具を販売するECサイトと実店舗を運営しており、釣りに関する情報を発信するリテールメディアを活用して、ファン層とのつながりを深めています。
釣具店B社の少々ユニークなところが、実店舗の商品棚にシェルフサイネージを設けている点です。シェルフサイネージは、従来の紙の値札や写真よりも場所を取らずに多くの情報を届けることができ、広告を設置するスペースを取ることが難しい店舗でも導入しやすい特徴があります。
B社では、このサイネージを使い、ルアーの詳細情報や価格、釣りのテクニック、タックルの紹介など、消費者に役立つ多数のコンテンツを効率よく発信しています。これにより、ECサイトだけでなく実店舗からもファン層からの支持を集めています。
6. リテールメディアの利用を検討中なら千趣会にご相談ください

リテールメディアを活用した販促活動にうまく取り組めば、リテール企業だけでなくメーカーや消費者にまでメリットをもたらします。
ただし、リテールメディアを導入する際には、事前分析やターゲティングが重要です。さらに、ターゲティングで得た結果から、リテールメディアで利用する広告を制作しなければなりません。そのため、場合によっては別の施策のほうが適しているケースもあります。
もし、リテールメディアの運営ではなく、EC事業の販促活動に悩んでいる場合は、まずはECサイト運営のコンサルタントに相談することをおすすめします。
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