鼎談:代表取締役、社外取締役TRIPARTITE TALK

“一歩先を行く意識”と“商人魂”で通販事業の再建を推進

千趣会社外取締役の青山直美氏、寺川尚人氏に星野裕幸代表取締役社長を加えた鼎談を2018年3月に実施しました。
SPAの巨人からニッチプレイヤーまで、かつてないほど多くの競合がひしめく通販・eコマース市場において、
当社が再び輝きを取り戻すにはどうすればよいか、意見交換を行いました。

“お客さま起点の商品開発”こそ私たちの最大の強み

千趣会として今、何をすべきなのか

青山
通販・eコマースの市場環境は、競合プレイヤーがかつてないほど多く、その厳しさは一層増しているものの、実は非常に成功している企業もあります。そうした状況下で、千趣会としてどうすれば成功を勝ち得られるとお考えですか。
星野
ご指摘のとおり、ここ数年で市場環境は大きく変化しました。プラットフォームが一般化して個人でも通販が可能になり、さらにSPA型企業からニッチ企業まで、現在まさに競合プレイヤーは360度にわたって存在しています。
これら競合と戦っていくには、まず我々の強みを再認識すること。そして、その強みを活かしてどう戦っていくか、戦術を立て、着実に実行していくことが求められます。 中でもお客さまの潜在ニーズに目を凝らし、まだ世の中にないものをお客さまとともに考え商品化してきた「お客さま起点の商品開発」こそ、競合にはない私たちの最大の強みであり、原点でもあります。この原点に今一度立ち返ることが、ほかとの差別化を図り、通販事業を再建する道であると考えています。
同時に、ニーズが多様化する現代にあって、お客さま一人ひとりの異なるニーズをしっかりと捉え、スピーディーに応えていくこと。それが今、私たちが取り組むべきもう一つのポイントであると認識しています。

ページの先頭へ

“一歩先を行く意識”でブームをつくり出していく

意識改革を促し、真の組織リーダー育成へ

寺川
大切なのは、従来の“後追い型”では勝てない時代にあって、「どう他に先んじていくか」という意識を常に持つということです。もともと千趣会のDNAの中には、「一歩先を行く」という意識や視点が色濃くあると思いますが、それをもう一度実行していくためにはどうすればいいのか、その方法論が問われているのではないでしょうか。
星野
かつてはできていたのに、今その「一歩先を行く」意識や力が薄れてきてしまっているというのは、やはり組織の問題が大きいのだと思います。
逆にいえば、組織改革を行うことで、再びその力を取り戻すことができるということでもあります。
寺川
これまでに千趣会は女性の身近なところで「ブーム」をいくつもつくってきた実績があります。この「ブーム」をつくる力を今後も発揮していければ、千趣会にはすごく大きなチャンスがあるはずです。
星野
そのために必要となる組織改編を現在、強力に推し進めているところです。専門店化もその一つです。お客さまニーズにマッチした専門性の高いオリジナル商品やサービスをしっかりと届けていくと同時に、専門店ごとに事業管理を徹底することで、事業運営を行う“店長”の経営感覚が研ぎすまされ、真の組織リーダーが育ち、企業としての活力も増進されます。新中期経営計画の最終年度である2020年に向けて、経営感覚をもつ社員を一人でも多く育て、若手社員が経営者をめざす活気ある企業風土へと変革を促していきます。

ページの先頭へ

自社の課題を“自分事”と捉える“商人魂”を持つ社員づくりを

より活力ある企業に生まれ変わるために

寺川
これまでの千趣会には、社員同士、あるいは社員と経営陣とで深くコミュニケーションをとり、時には議論を戦わせる中で意識を合わせ、合意を形成していくというプロセスが十分ではなかったように思います。そのため、業績低迷もどこか「他人事」のようになっていたのではないでしょうか。商品をつくる人、売る人、というように組織が縦割り化していたことにも要因があるでしょう。 つくったからには、売ったからには、きちんと責任をもって利益を追求する。そういう体制に変革することで、「自分事」として捉えられるようになり、いわば「ミニ経営者」としての自覚も生まれてきます。星野社長がいうように、専門店の事業運営のように、社員に「ミニ経営」の経験を多く積ませることは、強い会社にしていくためのステップとしても重要なものです。また同時に、そうした人をきちんと評価する仕組みも整備する必要があります。
青山
「自分事」にする、当事者意識をもたせるというのは、実は非常に難しいことです。例えば江戸時代に天秤棒に籠をぶら下げて商品を売り歩く行商スタイルがありました。籠にある商品を売り切るまで帰らない、そんな覚悟で朝出かけ、空の籠をもって揚々と帰れば褒められ、「明日も頑張ろう」と思う。それが“商人魂”の原点だと思うんですね。そんなシンプルな仕組みをつくり、さらにそれを「見える化」していくことが大事なのではないでしょうか。
寺川
もう一つ、私には今、千趣会という会社、あるいは千趣会で働く人たちが若干、自信を失っているように見えます。それはつまり、従業員の納得感や達成感が十分ではないということです。従業員満足度は本来、従業員の成功の数に比例するものだと思うんですよね。青山さんがいうように、籠を空にして帰ってきた人はしっかり褒める。
小さな成功を積み重ね、それを会社に認めてもらえることで、満足度も高まり、仕事をしていくうえでの自信や、自社に対する誇りも取り戻していけると思うのです。
特に当期は昨年希望退職者募集を行い、残念ながら会社をお辞めになられた方々もいる中で、そうした人たちに恥じない会社にしていかなければならない、そういう感覚をもって取り組んでいってほしいと思います。
星野
そして成果をきちんと認め、評価されていると本人が感じられる仕組みが大切なのですね。私も専門店化を進めていくにあたり、その利益に応じてメンバーの処遇が変わるなど、より結果と評価とを結びつけたものにしていく必要があると考えています。 今後も引き続き、お二人のご意見を踏まえて、組織のあり方はもちろん、評価制度についても検討を進めていきます。

ページの先頭へ

リアルな体験・実感を逃さず企業活動に正しく組み込む

より実効性の高いコーポレートガバナンス体制へ

寺川
千趣会が今後も女性に愛される会社であり続けるには、コーポレートガバナンスをきちんと実行していくことが欠かせません。常に会社は見られている、そしてこうした「見る目」に応えていく義務があるという意識をもち、きちんと行動で示していける会社であってほしい。特に生活に密着した領域で事業展開をしているだけに、商品や活動による影響なども熟考したうえで、意思決定をしていってほしいと思います。
青山
女性が働きやすい会社であることはもちろん重要ですが、同時に女性にとって「働きがいがある会社」であることが非常に重要です。「ウーマン スマイル カンパニー」を掲げるからには、やはりまずは女性社員が笑顔でいないと。女性社員の方々には、自分の能力を最大限に発揮できるように、さらに一歩踏み込む勇気、努力をもってチャレンジしていってほしいですね。
そして幻想や先入観に惑わされず、リアルな女性のお客さまにきちんと対峙していくことが大切です。もう一度「女性とは何なのか」「今、何を求めているのか」ということに真摯に向き合っていかなければいけないと思います。
寺川
青山さんのいう「リアル」というのは、一つのキーワードですね。もっとリアルに体験した中で感じたこと、たとえそれがどんな小さなことであっても見逃さず、活動の中に正しく反映していくこと。そうすればコーポレートガバナンスもより実効的なものになっていくと思います。
私たちもこれまでの経験や知見を活かし、社外取締役という立場から、積極的に提言を行っていきたいと考えています。
星野
新中期経営計画のもと、利益をきちんと出せる体質へと変革し、株主の皆さまに適切な還元を行える会社にしていくことが私の責務です。しかし、私を含めて当事者であるがゆえに気付きにくい点もあることと思いますので、お二人には今後も厳しい視点で提言をしていただき、より経営品質を高めていければと思います。本日はありがとうございました。

ページの先頭へ