株式投資と株主優待
株式投資とは
株(株式)とは、企業の発行する会社の所有権証明書(株券)のことです。投資して株式を購入し、株主となることで、会社の構成員として以下のことができるようになります。
- 株主総会に参加し、会社の経営に参加する
- 業績が良かった際に配当金を受け取る(インカムゲイン)
- 株主優待を受けられる(優待制度を実施している場合のみ)
また自身の持っている株は自由に売却することができますので、株価を確認し、自分が買った時よりも高い価格で売ることで儲けを出すことができます(キャピタルゲイン)。
同じように資金を投資し、利益の分配を得られるものに投資信託があります。投資信託では運用をプロ(ファンド・マネージャー)に任せることになり、投資する先の企業を自分で選ぶことができません。
一方、株主優待では自分の好きな企業を選んで株を買うことができますので、応援したい企業や配当利回りの良い企業、後述する株主優待の内容に惹かれる企業がある場合には、株式投資がおすすめと言えるでしょう。
株主優待とは
株主優待とは全上場企業(約4,000社)の内、約35%の企業が導入している株主に対しての謝礼のことです。対象企業の株式を一定以上保持する株主への謝礼品として、企業の自社製品や食品、金券、食事券などを贈呈します。配当金と異なり非課税となるため、優待目当てに株式を購入する方も多く、主婦層を中心に好評を博しています。ただし株主優待の対象者は国内在住が条件となるため、海外投資家には不人気です。
株主優待を実施することで、個人投資家からの株式購入が増え、超過リターンを期待できるほか、株主数が増えることによる株価の下支えや買収対策の面も期待できます。また、株主優待目当てで株主になる方は長期保有の割合が高いため、実施企業にとってもメリットがある制度であるといえます。
優待の内容
優待カテゴリ内訳
ではそんな株主優待の優待内容にはどのようなものがあるでしょうか。
たとえば千趣会では年に2回の権利確定月があり、その時点で100株以上所有されている株主向けに所有株式数に応じたお買物券を進呈しています。1年以上保有していただいている株主様には更に、保有年数と所有株数に応じたお買物券が追加進呈となります。
JR東日本では、100株以上所有している株主に向けて、運賃・料金の割引に使える株主優待割引券やJRE MALLクーポン等の株主サービス券を発行しています。
株主優待のご案内|JR東日本
このように自社や関連会社の商品やサービスを優待内容としている企業は、他にも数多くあります。
株主優待として導入企業が多い内容としては、金券(ギフト券、割引券)、食品(食事券を含む)、日用品、レジャー(施設入場券、宿泊券など)などが上げられ、野村IR調べのデータでは、1位が食品、2位が金券という結果が出ています。これは、株主優待制度を実施している銘柄に食料品業種や小売業が多いためです。自社商品(サービス・割引券等含む)を優待内容としている企業が多く、自社商品が提供できない企業では金券類、カタログギフトが多い傾向にあります。
ウィズコロナ・ポストコロナの株主優待
コロナ禍による業績悪化や東京証券取引所の市場再編の影響などもあり、優待内容を変更・廃止する企業も少なくありません。2022年も、1月時点で既にエービーシー・マートや柿安本店などが株主優待の廃止を発表しています。今後も株主優待の変更・廃止を行う企業は増えていくことでしょう。
一方で、株主優待制度を新設し、新規株主の獲得に乗り出す企業も多くあります。2021年は、約40の企業が株主優待制度を新設しています。
コロナ禍の現在、飲食業や観光業界が発行するお食事券やレジャー使用券については、使用機会の減少により、恩恵が受けづらくなっているという株主の声も聞かれます。それもあってか、食品や雑貨、QUOカードなどの金券、ギフトカタログ選択式といったモノをもらえる優待が好評な傾向にあるようです。
2021年に優待制度を新設した築地魚市場では自社子会社製造の食品、ゆうちょ銀行では「ふるさと小包」での取扱商品をはじめとする自行オリジナルカタログ(3,000円程度)を優待内容としています。
優待内容はどうするべきか
優待内容として導入が多いものは金券、食品、日用品、レジャーであると冒頭でご紹介しました。
各証券会社の公開している最新の人気銘柄のランキングページや、民間で優待内容を紹介している口コミサイトを検索することで、実際に株主が期待・注目している株主優待の一覧を確認することができます。
証券会社の人気株主優待ランキング例
しかし優待の内容によって、株主の満足度や株主優待を運用する難易度も変わってきます。それぞれの優待内容を比較し、メリット・デメリットを見ていきましょう。
自社や関連会社の商品・サービス提供のメリット・デメリット
自社で商品調達ができるため、外部への委託の必要がなく、比較的準備に手間がかからないというメリットがあります。企業に愛着を持って株式を購入している株主は、特に喜んでくれる優待品だと言えるでしょう。
ただし、扱う商材がギフト向きでなかったり配送に適さなかったりと、第一次産業、第二次産業の一部では優待品を用意できない場合もあります。また、自社や関連会社で扱っている商品・サービス内容に限定されてしまう分、優待品の選択肢が全体的に狭まるというデメリットがあり、幅広い層の株主を取り込むことが難しくなります。
金券を扱うメリット・デメリット
食品や商品を調達するのに比べ、商品管理の手間が少なく済むメリットがあります。在庫が残っても場所を取りませんし、賞味期限や衛生管理の必要もありません。発送費用に関しても物品を送るのに比べて比較的安価で済みます。
一方で金券ショップで株主優待の乗車券やサービス券が販売されているのを見たことがある人はいるのではないでしょうか。人気や需要がある反面、転売される可能性はあります。また、地方企業で株主優待品としてQUOカードを採用したところ、使用できる店が近隣になくクレームに繋がったという事例もあり、内容によっては株主様が得られる恩恵が少ない可能性もあります。
食品を扱うメリット・デメリット
株主優待制度は主婦層からも注目を集めており、食卓を支えてくれる食品の株主優待は喜ばれる傾向にあります。普段自分では購入しない食品をもらえる優待は、ふるさと納税と並んで好評です。
反対に好きな食べ物ではない(選べない)、賞味期限が短く食べきれない、クール便でのお届けの場合受け取りが大変などの理由で望まない人もあり、扱い方には工夫が必要です。また食品の賞味期限の管理や食品メーカーの衛生管理など懸念事項が多く、リスクが高い傾向にあります。
オリジナルカタログギフトのメリット・デメリット
ありもののカタログではなくオリジナルを作成することで、他社との差別化を図ることができ、選ぶ楽しみを送ることができます。欲しいものを自身で選択でき、喜ばれやすいでしょう。掲載内容を工夫することによって地場企業(地方企業)のサポートをすることも可能です。
ただし、複数商品の掲載が必要になりますので商品調達やカタログ作成に手間がかかり、メーカーとのやり取りや出荷管理が煩雑になるデメリットもあります。外部の専門運営会社へ委託をすることもできますが、費用面での負担が発生してきます。
株主優待の新設
株主優待を新設するにあたっての準備
まずは株主優待について新設にかかる社内稟議が必要になるでしょう。どういった目的で株主優待を行うのか、費用感はどのくらいか、優待内容はどうするのか、運営は自社で行うのか他社で行うのか、といった項目について社内で検討していきます。
社内稟議が承認され株主優待の実施が決定したら、タスクと工程を確定させます。権利最終日から配送が完了するまでの動きを定めながら、自社で行う場合は社内での対応部署を、他社に依頼する場合には委託先と委託する業務内容を決定して調整していきます。
自社内、またはメーカーとやりとりを行い、優待品の選定と調達を行います。カタログ等での選択式を採用する場合、年度や商品ごとで出荷量が増減することが考えられます。繁閑や出荷のボリュームが掴み辛いため、より慎重な選定が必要となるでしょう。
ステークホルダーに向けた株主優待制度導入のアナウンスも行っていきます。
株主優待の流れ
株主優待の商品は権利確定日から2、3か月ほどで株主のもとに届けられます。その間の動きについて見ていきましょう。
権利確定日に持株数や所有年数で対象となる株主データを抽出します。株主データを元に通知方法の検討や優待品の用意をしていきます。株主データは株式購入時のまま、住所情報などが更新されていないケースも多いため、株主への事前の周知や情報更新依頼をしておくと良いでしょう。
優待品が同一の場合には、各種通知に同封もしくは単独で、準備が整った時点で商品を発送し、手元に届けていきます。
優待品が選択式の場合、数選択肢から選ぶ形式の場合には、申込期間を設けてDMを発送し、各株主からの申し込みを待ちます。ハガキで申し込むカタログ形式、サイトを設けインターネット上から注文を受け付ける形式、その両方を組み合わせた形式などがあります。申し込み内容の確認が取れたら、随時商品を発送していきます。
DMや商品時期の発送と合わせて、事務局およびコールセンターを開設し、株主からの問い合わせや申し込みに対応します。問い合わせの内容は、優待品の詳細、お届け時期や配送状況の確認、届け先の変更依頼などが主となり、DM着荷直後に件数が膨らみます。商品のお届け完了後も、問い合わせがある場合がありますので、一定期間は事務局を保持する必要があります。
一例ですが、3月末日が権利確定月(決算月)となる企業の場合、大まかに以下のようなスケジュール感で動くこととなります。
11月~12月 | 株主優待の実施を決定、稟議、委託先の決定 |
1月 | ニュースリリース、優待品メーカーの選定・調達 |
2月 | 優待品確定 |
3月 | 権利確定月(決算日)、対象株主の決定、対象株主への通知の作成 |
4月 | 運用マニュアルの確定 |
5月末~6月上旬 | DMを発送、事務局・コールセンター開局、優待品受付開始 |
7月 | 優待品受付終了 |
~8月 | 商品発送、配送管理 |
9月 | 事務局閉局 |
株主優待の運営
流れを見ていただいてお分かりのように、株主優待に関わる業務は幅広い分野にまたがって存在します。これらを全て自社や関連会社内で完結させることもできますが、株主優待を専門に行っている会社に委託するという選択肢もあります。
自社で運営した場合、外部の専門会社に運営を委託する場合、それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
自社で優待を運営するメリット・デメリット
何より費用が抑えられることにあります。優待品調達、株主データの作成、商品発送、配送管理、問い合わせ対応と株主優待業務は多岐にわたっていますので、専門会社に外注するとそれだけ費用も嵩んでしまいます。自社で株主優待を運営することによって、優待制度に対する株主の声を直に聞くことができるのも大きな効果でしょう。社内に運用のノウハウが残ることも、メリットの一つです。
一方で、多種多様な業務に社内で対応するのは非常に大変です。対象株主数が多い場合はそれだけ業務に割く時間も多くなり、本来の業務以上の負担となることもあります。また、新設したばかりで運用のノウハウがない場合には、対応しきれないトラブルも出てくるでしょう。株主の個人情報を扱う場面もありますから、トラブルの内容によっては会社の信用を大きく傷つけ、顧客の離反を招くことになりかねません。
他社に優待を委託するメリット・デメリット
株主優待業務は問い合わせへの対応や配送データの作成など、思った以上に時間や手間のかかる作業が多いものです。専門会社に委託することで、業務の負担を軽減し、コア業務に注力することができます。運用のノウハウを持っている企業に委託することができれば、トラブルを防ぎつつクオリティの高い株主優待を提供することができ、株主からの信頼や長期保有にも繋がっていきます。
全ての業務を委託することも可能ですが、負担のかかっている一部業務のみをアウトソーシングするという方法もあります。
ただし自社で運営するのに比べ、費用が高くなってしまうことは否めません。顧客との窓口である事務局を依頼した場合、株主の声が届きにくくなってしまうこともあるため、信頼できるパートナー企業を選ぶ必要があるでしょう。
トータル一元管理可能な株主優待受託
千趣会の株主優待サポートでは、商品の調達・選定、カタログ制作、受付事務局・コールセンター業務、配送管理まで、株主優待運営に関わる全業務をワンストップで請け負うことができます。全ての業務を一社で請け負うことで、各業務を複数社に委託するより低コストで高品質なサービスを提供できるのが強みです。自社通販事業で得たノウハウを用い、実際に複数社の株主優待業務を委託している実績もございます。
その他、株主優待の一部業務のみを依頼したい、商品調達・選定のみを任せたいといった一部アウトソーシングから、費用、規模感まで、貴社のご希望に合わせたカスタマイズにて対応致します。まずはご相談ベースでもお気軽にお問い合わせください。
まとめ
今回は株主優待制度の実施と新設について、制度開始までの大きな流れを紹介してまいりました。
株主優待の実施・運営は決して楽ではありませんが、優待をきっかけに企業を知ってもらったり自社に愛着を持ってもらったりと、自社をアピールしながら株主を増やすことができる手段でもあります。優待内容の工夫や他社への委託も視野に入れながら、自社と株主にとってプラスとなる株主優待の実施を検討してみてください。