ウーマンスマイルカンパニー SENSHUKAI 株式会社 千趣会統合報告書千趣会レポート2017

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トップメッセージMESSAGE FROM THE PRESIDENT

“脱カタログ”“脱総合”をキーワードに
構造改革を断行し、収益力を強化します

今やメーカーから個人まで、さまざまな事業者がECビジネスを展開し、まさに従来の“通販業界”という概念が覆されそうとしている時代。そうした「通販・新時代」において、どのような価値を創出し、提供していくことができるのか。当社資本の強みである「ブランド」「お客様さまとの関係性」「オムニチャネル」「SPA型商品開発体制」「人財」にさらに磨きをかけ、時代にマッチした「新生・千趣会」へと生まれ変わるべく、さまざまな改革を進めていきます。

代表取締役社長 星野 裕幸

「新生・千趣会」に向けて価値を提供できる分野に事業領域を絞り、競争力を高めていきます

昨今では、メーカーをはじめさまざまな事業者がECビジネスを展開するなど、通販は従来の業界の枠を超えて広がり、競争は激化しています。また、ECのユーザー端末もPCからスマートフォンへと、よりパーソナルなものへとシフトしています。こうした新たな環境下で、どのような価値を創出し、提供していくことができるのか、より大きな枠組みの中で考え、事業そのものを時代にマッチした形へと改革していくことが求められています。
そこで、“脱カタログ”“脱総合”をキーワードに、当社が価値を提供できる分野に事業領域を絞り込むことが重要だと考えています。具体的には、カタログを中心とした従来型スタイルからECへと軸足を完全にシフトし、カタログはシニア層向けやECサイトにお客さまを呼び込む導線などと位置付け、その効力が見込まれるものに限って、部分的、補助的に活用していきます。また、オリジナル商品を総合的に揃えるのではなく、当社が優位性を発揮できるポイントに絞って、オリジナル商品を投入し、それ以外の分野ではナショナルブランド商品(仕入商品のこと。以下、NB商品)を活用し、品揃えを担保していきます。
こうした中長期的な施策とともに、即効性のある施策としてコスト改革にも積極的に取り組むことで、今後も改革を推進し、「新生・千趣会」の基盤をつくっていきます。
その上でキーとなるのが、当社資本の強みである「ブランド」「お客さまとの関係性」「オムニチャネル」「SPA型商品開発体制」「人財」です。当社には固定客を持つブランドが複数存在しています。商品力を高め、それらのブランド力をさらに高めていくためには、これまで築いてきたお客さまとの良好な関係性が欠かせません。モニターとしてご意見を伺うなど最大限に活用し、他社にはない商品を生み出していきます。その際にSPA型の商品開発力を発揮し、収益性向上も重視していきます。さらに、競争力のある商品を確実にお客さまに届けられるよう、オムニチャネルのさらなる充実、特に魅力的なECサイトの構築に注力していきます。また、開発・EC強化の両面で重要な従業員の成長を支援し、チャレンジする人材を育て抜擢していきます。
こうした施策に加え、「厳しい競争に打ち勝ち、確実に成果を出していくには、荒波に立ち向かう勇気と活力ある企業風土が必要不可欠である」という考えから、2016年1月に社長に就任して以来、これまで曜日限定だったファッションで自分を表現する「フリーウェア・デー」を毎日に拡大し、役職で呼ばない「さん付け文化」の浸透を図るなど、「新生・千趣会」に向けた職場改革を推進してきました。
その甲斐あって、誰もが率直に意見を言える風通しのよい組織になってきたと手応えも感じています。

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2016年度の業績売上は減少したものの、黒字化を達成し、攻めに転じる態勢が整いました

2016年度の連結売上高は、1,290億74百万円と前期に比べて3.9%減少しました。減収要因としては、主力のベルメゾン事業において売上に占める割合が大きい衣料品および服飾雑貨の苦戦が挙げられます。
その背景には、一つにはグローバルプレーヤーの参戦によって、大量生産による廉価な衣料品が氾濫し、当社規模では価格競争に遅れを取らざるをえない環境にあること、もう一つは、消費者の節約志向とともに選別消費が一層強まり、家計における衣料品の支出の割合が減少傾向にあることです。さらには社内の問題として、スマートフォン対応の効果により、スマートフォン経由での受注は伸長したものの、カタログ経由での受注減少分をネット全体での受注で補いきれていないことも挙げられます。
一方で収益は大幅に改善し、営業利益は11億94百万円(前期は34億37百万円の営業損失)、経常利益は16億73百万円(前期は25億40百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は14億20百万円(前期は53億7百万円の当期純損失)となりました。
その要因は、主力のベルメゾン事業において、2015年度にそれまで積上っていた在庫品をセール販売および処分したことで、2016年度はセール販売が減り原価率を下げることができたこと、美濃加茂ディストリビューションセンターの稼働によって物流コストが削減できたこと、販売費や一般管理費を削減したことが挙げられます。
一応の黒字化は達成したため、2017年度は「攻める年」「改革していく年」として一段とギアを上げていきます。

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通信販売事業の方針と計画EC販売力強化のため、構造改革を断行します

2017年度はこれまでの施策を踏まえ、“カタログ”から“ネット”、“総合”から“専門店集積型”への大転換を成し遂げていく年と位置付け、ベルメゾン事業では若干の減収を覚悟の上で、構造改革に乗り出します。
2017年1月には組織改革を断行しました。これまではカテゴリー別の部門で商品企画・開発から販売までを一貫して担当する体制を採ってきました。そのため、1年後にカタログに掲載するための商品企画・開発を行いながら、掲載直前もしくは掲載中のECサイトにおける品揃えや販促キャンペーンなど、いわゆる“売場づくり”も並行して行うことになり、EC販売力の強化に専念できない状況にありました。実際にECサイトへの訪問数は増えているものの、お買い上げに至る率はまだまだ低いのが現状です。お客さまの行動履歴や属性データをフル活用し、お客さま一人ひとりの嗜好に合った魅力的で買い物がしやすいサイトをつくり、いかにお買い上げ率を向上させるかが最大の課題と言えます。ECサイトへの訪問数自体は伸びているので、逆に言えば伸びしろがあるということです。そこで、カタログからEC販売中心の組織に変更し、開発部門と販売部門とを切り分けました。これにより、開発部門は商品開発に専念できるようになり、売れる商品が開発できれば、カタログ発行を待たずに他チャネルでタイムリーに販売することもできるようになります。
その上で、「魅力的な品揃え」と「売り切る体制」を確立していきたいと考えています。これまでオリジナル商品にこだわり、売上の7割がオリジナル商品でした。しかし、衣料品が売れず、在庫リスクが高まる昨今、オリジナル商品の比率についても見直す必要があると感じています。そこで、オリジナル商品は他では買えないブランド力のある商品に絞り、「一カ所(同じサイト内)でまとめて買いたい」というニーズをNB商品で満たすことで、収益性と一人当たりの購買額の向上を狙います。

また、EC販売部門が在庫の動きを見ながら、リアルタイムに販売促進策を打つことで「売り切る体制」の確立にもつなげていきます。 通信販売事業全体としては、JFRグループの通販事業を担う(株)JFRオンラインの事業を継承した(株)フィールライフ(詳細は26ページ)の売上が新たに乗ること、雪印メグミルク(株)との合弁事業「ベルネージュダイレクト」の機能性表示食品の売上が大幅に伸びると予想していることから、売上高は当期比5.0%増の1,119億30百万円を見込んでいます。 利益面については、販管費の削減を一層進めていきます。品揃えを確保するためにNB商品を増やすことで、一時的に原価率のアップが見込まれますが、長期的にはオリジナル商品を集約することで在庫を残さない体制の確立につながり、ひいては収益率の向上になると考えています。

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ブライダル・その他事業の方針と計画ブライダル事業の収益力強化、保育の周辺事業に取り組んでいきます

少子高齢化を背景として結婚式場の利用者数は減少傾向にあり、ブライダル事業を取り巻く環境は厳しさが増しています。こうした中、2017年度は新規出店を行わず、既存店の収益性の向上にこだわりたいと考えています。2015年度にワタベウェディング(株)と資本提携したことにより、日本最大級のグループとなりました。その規模を活かし、ドレス・アルバムの制作や引き出物などの内製化を進め、収益力を高めていきます。さらに新生活に必要な家具・インテリア用品などの提案という切り口から、ベルメゾン事業との相乗効果も狙っていきます。
新規事業の中では、特に保育園事業に力を入れていきます。2016年度には単独で黒字を計上することができました。2017年4月には、7園目のオープンを予定しています。今までは認可保育所を中心にしてきましたが、今後は認可外保育施設も視野に入れ、教育なども含めた周辺事業の開発にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。女性のライフステージの中でも、ことさらに重要な妊娠・出産・育児に、これまで以上に焦点を当てて、しっかりと寄り添い支えられる存在であり続けられるよう、千趣会が持つリソースを最大限に活用し、取り組んでいきます。

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中長期的な戦略ブランド力の向上と販路拡大、シニア層へのアプローチに注力します

当社は2018年度をゴールとする5カ年の中長期経営計画「Innovate for Smile 2018」を推進しています。2018年度の売上目標である1,650億円の達成は厳しい道のりですが、営業利益目標である50億円は何としても達成すべく、全力を挙げていきます。 2015年度に立ち上げたオリジナルブランド「ベルメゾンデイズ」についてはアウターなどの衣料品を縮小して、家具・インテリア中心のブランドに転換。モノ消費から経験を重視したコト消費へと移行する傾向が顕著になる中、SPA型商品開発力をフル活用し、ストーリーのあるモノづくりを推進し、ブランド力の向上につなげていきます。他のブランドについても、個々のポジションをより明確にし、“専門店化”を進めていきます。
販路拡大については、JFRグループとの業務提携を活用し、2016年度は「ケイカラット」や「ベネビス」の実店舗展開、「ホットコット」の店頭販売などを推進してきました。2017年度は、「ベルメゾンデイズ」や子供服ブランド「ジータ」の実店舗展開も視野に入れるなど、オムニチャネル化をさらに推進していきます。

また、顧客の平均年齢が70歳代の(株)JFRオンラインの大丸松坂屋通信販売事業を継承した(株)フィールライフを中心に、シニア層へのアプローチを強めていきます。
海外での通販については、小規模ではありますが前年度に比べて倍増するなど、順調に伸びています。今後も越境ECへの出店をさらに進めていきます。

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ステークホルダーの皆さまへガバナンスを強化するとともに、女性の毎日に笑顔を届け続けます

投資家や株主の皆さまと価値観や倫理観を共有し、スピーディーに改革を実行に移せるよう、取締役会の活性化や、投資家や株主の皆さまとのコミュニケーションの質的向上や機会増加に引き続き取り組んでいきます。
今は一度の不祥事で一瞬にして社会的信用を失う時代です。すべてのステークホルダーに影響を及ぼすことになるため、2016年度はリスク管理を強化すべく、体制の整備に努めました。今後も経営の透明性確保に向け、しっかりとガバナンスを強化していきます。

CSRについては、出生率向上が極めて重要な社会課題となる中、妊娠・出産・育児という重要な局面において、もっと支えることができないかと模索しているところです。育児関連商品の強化や保育周辺の展開なども含め、さまざまな面からアプローチしていきたいと考えています。
私たちは「ウーマン スマイル カンパニー」として、これからも女性の毎日に笑顔を届けていきます。

代表取締役社長 星野裕幸